Stephen HoughのMozartアルバム

[Hyperion CDA67598]

意外にもHoughのCDを取り上げるのはこれが初めてだが、残念ながら今回の新譜の印象は芳しくない。前半のMozartオリジナル曲は、整ってはいるもののどこかお嬢様芸的で、もう少し覇気というか生気というか、あるいは推進力、ダイナミズム、ドラマ性、そういったものが欲しい。最近はMozartのピアノソナタは時代楽器に興味が移っておりモダンピアノで弾いた普通の演奏では面白さを感じるのは難しくなっているのは確かだが、それにしてもこのMozartは退屈だ。また最後に置かれたフィガロ・ファンタジーは今回の目玉だと思うのだが、これもヴィルトゥオーソ・ピースとしては野心に欠けるというか、脂がすっかり抜けきった鶏のささみのような演奏。結局、間に置かれた小品集が一番彼らしさが出ていたのだが、そこだけというのはちょっと寂しい。