Simone DinnersteinのJ.S.Bachゴルトベルク変奏曲

Simone Dinnerstein [CD-80692]

ゴルトベルク変奏曲のCDは特に熱心に集めているというわけでもなく、知らない人の盤はなかなか手が出にくいのですが、最近出たSimone Dinnerstein(シモーヌ・ディナースタイン)盤は、たまたま見たプロモーションビデオでの柔らかな弾き方に、これはちょっと期待できるかも、と思わせるものがあったので買ってみました。

印象を一言でいうと、「優美」ですかね。癒し系といってもいいかもしれません。全体的にゆったりと時間が流れているようで、またタッチが非常によくコントロールされていて、刺激的というかキツい音は一切出さないといった感じです。1つ1つの音が真珠コーティングされているような、そんなイメージが思い浮かびます。技術的にも安定感があり、名技的変奏でもあくまで落ち着いていて、さりげないといった言葉が似合います。最初の第4変奏くらいまでは、さすがにちょっとテンポがゆっくり過ぎて多少もどかしい面もあったのですが、それ以降は流れがよくなってくる感じです。ただ多少物足りない点を挙げるとすれば、「面白さ」ですかね。全体を優美感で統一しているのはよいのですが、個人的にはアーティキュレーションや繰り返しでの変化、対位法的な面白さの演出(内声の強調)など、もう少し工夫や遊び心があってもよいのではないかと思いました。

ちなみに基本的に繰り返しはすべて行っているのですが、たまに省略していることがあって、もしかしてCD1枚に収めるために少し省略したのかなと勘ぐってしまいます。(収録時間は78:20)