Dinara Nadzhafovaのデビュー盤

Dinara Nadzhafova

去年の浜コンでは3次まで進み、奨励賞となったDinara Nadzhafova(ディナーラ・ナジャーフォヴァ)のデビュー盤。曲はLisztのハンガリー狂詩曲第2,6番、ペトラルカのソネット第123番、忘れられたワルツ第1番、愛の夢第3番、鬼火、ChopinのエチュードOp.10全曲。(このうち狂詩曲第2番、鬼火、ChopinのOp.10は浜コンでも弾いた曲。)録音は2006年4月ということなので浜コンの約7ヶ月前の演奏ということになります。

浜コンのときのライヴCDは買っていないので残念ながらそのときと聴き比べはできないのですが、狂詩曲第2番と鬼火については浜コンのときの演奏の方が凄みがあった気がします。生で聴いていた分印象が強くなるのは当然として、彼女の音力というか音圧の強さみたいなものが録音ではうまく捉え切れないせいもあるのかもしれません。凄みはそれほどと言っても秀演であることは違いなく、特に十八番と思われる鬼火は(浜コン時もそうでしたが)非常にキレがありますし、狂詩曲2番もフリスカでの加速感はたいしたもの。今回初めて聴く6番もフリスカオクターヴ連打の精度と安定性はさすがです。

一方のOp.10の方は、これは明らかに浜コンのときより上でしょう(少なくとも完成度は)。というか浜コンのときは調子がもう一つだったのか(後で聞くところによると結構パニクっていたらしいですが)割とミスが多かったですし。また浜コン時は結構個性的な解釈だったような気がするのですが、今回のCDはオーソドックスというか模範的。コンクールも本CDのような出来だったら本選に進めたのではないでしょうか。ただ演奏がやや剛直かつ直線的(ちょっとPollini盤を思わせるものがある)で、もう少し遊びのようなあってもよいかもしれません。最近聴いたKudoyarovのOp.10の方が強引なところはあってもノリがよくて聴いていて面白かった気がします。また全体的に、ハンガリー狂詩曲や鬼火のような技巧的な曲では強みを発揮するのですが、そうでない曲では持て余し気味なのかやや大人しくなってしまっていて、語り口の上手さで勝負するタイプではないだけにもう少し思い切った表現があってもよかったように思います。(そういえばジャケット写真も前で手を合わせていたりして妙にかわいらしく映っていますね(笑)。)