Giuseppe AndaloroのLisztメフィストワルツ全曲ほか

Giuseppe Andaloro

NAXOSのLisztピアノ作品全集のVol.24。演奏者のGiuseppe Andaloro(ジュゼッペ・アンダローロ)は第1回の仙台国際コンクールの優勝者ということで名前は知っていましたが聴くのはこれが初めて。2005年のブゾーニコンクールにも優勝しているようです。曲はメフィストワルツ全曲(1〜4番)のほかに、2つのエレジーと演奏会用大独奏曲S176。ちなみにNAXOSのこのシリーズはHowardによる全集に比べると歩みは遅いですが奏者が毎回違うということで何かしらの期待感を持たせるところがよいです(特に今回のような若手演奏家の場合は)。

演奏は全体的になかなかの好印象。強い個性はないのですが、テクニックがしっかりしていて、素直。特にフォルテ和音でも音が濁ったりこもったりせず、Lisztにふさわしい輝かしさがあるのが強みです。メフィストワルツに関しては、1番は最近聴いたD.Tong盤に比べるとやや優等生的というか、さらに畳み掛けるようなエネルギーが感じられるとよいかなと思いましたが水準以上の出来で、2番以降もしかり。全曲盤ということで言えばKatsaris盤は少し癖がありますし、Andsnes盤は3番が未収録、Swann盤やSetrak盤は演奏に少々難あり、ということで値段も併せ考えると一番お薦めできる盤かもしれません。そしてもう一つの目玉の大独奏曲ですが、実はこちらは大曲の割には今まであまり真面目に聴いたことがなくて、他盤も多分1,2枚くらいしか持っていないのですが、今回のAndaloroの演奏は余裕のある技巧で曲の面白さが伝わってくる感じです。

全体的に少し注文をつけるとすれば、「歌」がやや希薄なところでしょうか。(イタリア出身だけにやや意外な感じ。)メフィストワルツの緩徐部分などテンポが遅めな割りに歌い方が慎ましくて、特に大独奏曲は緩徐的な部分が多いだけに(曲を聴きなれていないこともありますが)そういった部分はやや退屈感がなきにしもあらず。ともあれテクニック的には確かなものを持っているだけに今後も期待できそうです。