Tzimon BartoのRavelピアノ曲集

Tzimon Barto

Rameauの鍵盤作品集に続くOndineからのTzimon Barto(ツィモン・バルト)のソロピアノ曲集。今回はRavelの夜のガルパール、鏡、水の戯れということで、曲的には前回と違ってかなりオーソドックスなところを狙ってきました。ちなみにBartoはEMI時代にはアンコール集でRavelクープランの墓の一部(トッカータなど)は録音していました。

曲者(?)のBartoということで、前回Rameauと同様、今回のRavelもきっと「濃い」演奏なんだろうなと思って聴いたのですが、予想は半分アタリ、半分ハズレといった感じでしょうか。確かにかなり個性的な演奏なのですが、個人的にはもっと粘るようなというか、(悪く言えば)こねくり回すような表現(たとえば最近リリースされたPletnevのBeethovenピアノ協奏曲のような。と言っても少し試聴しただけですが。)が多いかと思ったら、意外とそういうことは少なくて、むしろ音色、特に音の強弱ついてこだわりがあるようで、楽譜には無いような強弱の微妙な変化や繊細な表現が特徴のように思います。もちろんアゴーギクについても個性的で、道化師でのしゃっくりのようなリズムや、スカルボでの瞬間的な急加速など結構面白いです。ただ問題は精度の面で、そのような加速するところでも、ん?ごまかし?と思えるようなところがあったり、あるいは打鍵の滑らかさや粒の揃いがもう一つかなと思うところがあったりと、EMI時代から彼は精度を売り物にしていたわけではないですが、そのあたりは(例えば全盛期のPogorelichなどと比べて)やや説得力を欠く面があるかもしれません。ちなみにテンポに関しては概ね常識の範囲内なのですが、ただ鏡の鐘の谷は8:05かけていて、通常は5分台で弾かれることが多いことを思うと、ちょっと病的ですね。ともあれ、個性的なRavelを聴きたい人は買ってみてもいいかもしれません。