John ChenのDutilleuxピアノ独奏曲全集

John Chen

乗りかかった船、というわけではないですが、もう一つDutilleuxのピアノソナタのCDが出ていたのでこちらも買ってみました。演奏はJohn Chen(ジョン・チェン)で、2004年のシドニー国際コンクールの優勝者(2位がUrasin)。アルバムタイトルが「全集」となっていますが、Dutilleuxはまだ存命なので現時点での、ということでしょう。(と言ってももう90ですし、全集でもCD1枚に余裕で入るほど寡作家な上にピアノ曲は'88年以降書いてないようなのでこのままになる可能性は高そう。)

メインのピアノソナタですが、こちらは前回のRatuldと比べるともう少し演奏者の個性が出ているようです。第1楽章の冒頭から微妙なアゴーギグを付けていて、どこか浮遊感みたいなものが出ていますし、表情やタッチの変化も、これみよがしというほどではないですが感じられ、いろいろと工夫していることがわかります。終楽章は急速変奏など通常は技巧の見せ場だけに猛スピードで弾かれることも多いのですが、彼の場合はむしろ落ち着いたテンポ設定で、その分細かなニュアンスを出そうとしているように見えます。以前聴いたシドニーコンクールライヴCDでは全く印象に残らなかったのですが、これを聴くとだてに優勝したわけではなさそうです。

ちなみに他の作品は3つの前奏曲を除くといずれも1,2分程度の小品で、しかも調性的でシンプルなものが多く、軽めというか余技的な作品といった感じです。3つの前奏曲は逆に個人的にはやや難解というか拍子感が希薄で苦手系。ただ第3曲の4分過ぎあたりからの律動的なところはちょっと面白さも感じます。