Andsnesのピアノ小品集’HORIZONS’

Leif Ove Andsnes

Leif Ove Andsnes(レイフ・オヴェ・アンスネス)によるアンコール用ピアノ小品集。Andsnesは割と好きなピアニストであるとはいえ、最初曲目をざっと見たときはもう一つ食指が動かないなぁと思ったのですが、よく見ると私の好きなSmetanaの「海辺にて」Op.17が入っており、これが決め手となって買ってみました。

聴いた印象としては、(矛盾するようですが)全体としてはあまり印象に残らないといった感じ。イージー・リスニングと言うのとはまた違いますが、耳に心地よい小品が並んでいて、解釈は奇を衒わず正統的、技術的にも洗練されいて特にケチをつけるところはないのですが、主張とかこだわりみたいなものはあまり感じられません。鳥のササミみたいなもので、脂がなく体には良いのは確かなんですが、どこか味気ないといった感じでしょうか。特に、ケレン味といった要素は皆無です。問題の「海辺にて」についても、やはり技術的に非常に洗練されているのですが、私からしてみるとえらくスッキリサッパリしていて、うねりや激しさみたいなものはあまり感じられません。もっともこの曲については昔のSmetanaピアノ作品集のエントリでも書いたように、浜コンでのTcherepanovの演奏が刷り込みになっていて、普通の(模範的な)演奏では物足りなく感じるようになってしまっているのかもしれませんが。

Andsnesというと、Virgin時代のGrieg, Chopin, Rachmaninovなど研ぎ澄まされた独特の感性や瑞々しい解釈に大いに魅力を感じていたのですが、(Virginの吸収により)EMIに移った後は(CDを聴く限り)何かそういった尖ったところが減って常識的というかいわゆる「丸く」なった感じがして(テクニックは健在なのですが)、少しさびしいものがあります。Ashkenazy路線と言っては言い過ぎでしょうが。