LazaridisのLisztパガニーニ大練習曲&ロ短調ソナタ

George-Emmanuel Lazaridis

CD聴き比べに載せているような曲でも、その好きさ加減というか、その曲のCDを見つけたときに買うかどうかの敷居の高さは幅があって、例えばノルマの回想のように、知らない人が弾いていたらとりあえず可能性を信じて買ってみる、というのものもあれば、夜のガスパールのようによほど気になる演奏家でなければ買わない、というものまでいろいろです。Lisztのパガニーニ大練習曲(ただし全曲盤)はどちらかというと前者、というわけで今回George-Emmanule Lazaridis(ゲオルゲ=エマヌエル・ラザリディス)による新譜を買ってみました。併録はロ短調ソナタで、こちらはどちらかというと後者ですかね(その割には今回のような併録のせいかCDは結構たまっているんですが^^;)。

聴いてみましたが、これはなかなかいいです。見た目の派手さや凄みのようなものこそないものの、テクニックが非常しっかりしていて、音の粒立ちもよく、どの曲もキッチリ決めています。特に印象に残ったのが5番(狩り)で、この曲は曲集の中では難度がやや低いせいかどちらかというか軽んじられている感じもあるのですが、彼の演奏は躍動感があり、曲想の変化などもあって聴かせます。ついで6番も正統的な解釈と確かな技巧で、この曲の模範的演奏と言えるでしょう。逆に2番は主部の細かいパッセージでもう少し精妙さがあってもよいかな。またラ・カンパネラも堅実というかやや大人しいかも。それでもトータルとしては(この曲集は意外と良い盤が少ないだけに)手持ちの中でもいい位置につけそうです。一方のロ短調ソナタも、細かく速いパッセージがどこまでもクリアで、彼の技巧のポテンシャルの高さを感じさせます。ただこちらはエチュードではないだけにさらに詩情とか幻想性とか、そういうものがあるとよいかも。録音のせいか音色がやや硬質なのもそう感じさせる一因かもしれません。

いずれにしてもなかなか期待させるピアニストです。ディスコグラフィーを見るとSchumannの謝肉祭なども出ているようで、ちょっと興味が湧いてきました。