Kuijken/La Petite BandeのJ.S.Bachモテット集

La Petite Bande

カンタータ集の陰に隠れてあまり話題になっていないようですが、S.Kuijken/La Petite BandeによるJ.S.Bachのモテット集が別レーベルからリリースされていたんですね、ということでこれも買ってみました。当然ながらこれもOVPPです(ただしいわゆる二重合唱なので歌手は8人)。一応全集ですがBWV230('Lebet de Herren, …')は偽作の疑いがあるということで残念ながら含まれていません。

OVPPによるJ.S.Bachのモテット集としては、Junghaenel/Cantus Coelln盤が、その完璧とも言える技量の高さで私のお気に入り盤、というかこれがあればしばらく他盤はいらないかなとも思っていたのですが、Junghaenel盤がどちらかというと器楽的というか人工美の極致みたいな合唱なのに対し、Kuijken盤ではもっと柔らかさや人間味みたいなものを期待できるのではと思っていたのですが、だいたいその線で間違っていないようです。録音は割と残響が多めで、各声部がくっきりと分離されているというよりも、声が融合して1つの響きとして聞こえるといった感じです。となるとOVPPの利点があまり活かされないのでは、ということになるのですが、確かにその嫌いはあるかもしれません。また合唱の精度やキレの面ではやはりJunghaenelに及ばない面があるのは否めません。さらに個人的に少し気になった、というかこれは私の好みの問題なのですが、器楽による各声部への伴奏が結構厚めというか存在感があって、個人的にはもう少し純粋に声だけのからみを聴きたかったかなという気がします。器楽と声が混じり合うことによってやや濁った感じになり、響きの透明感が失われるような気がします。(個人的にはアカペラでやってもらってもいいんですが。)

ちなみにKuijkenは'92年にもACCENTから(こちらはライヴ録音で)モテット集を出しているのですが、そちらはOVPPではないので昔ながらの合唱(といっても1パート3人ですが)という感じです。