Jenny Linの’The Eleventh Finger’

Jenny Lin

現代モノのピアノはあまり聴かないのですが、超絶技巧系(というかエチュード系)はちょっと興味があって、今回の'The Eleventh Finger'と題するCDも、10本の指では弾けないような(?)技巧的な曲を集めたアルバムということで買ってみました。演奏はJenny Lin(ジェニー・リン)。収録されているのはKampela,Ligeti,Gervasoni,Nordschow,Tenney,Sharp,Vivierによる作品で、この中で名前を聞いたことがある作曲家はLigetiぐらいなんですが、LigetiとViverの曲以外は世界初録音だそうなので、単に私が無知なだけでもないのかも。

今回一番面白いと思ったのはKampelaの'Nosturnos'。Nosturnosとはnocturneとポルトガル語のchanges/shiftsを表す言葉を合体させた造語だそうで、正直あまり夜想曲という感じはしないのですが(全体的にアップテンポで、特に最初は激しいビートで始まる)、確かに曲調が次々と変わっていき、セリー音楽風のところもあって必ずしも私好みでないというか許容範囲ギリギリの部分もあるのですが、そういう部分もずっと続くわけではなく却って薬味の役割を果たしている感じがして、聴いていて刺激があります。Nordschowの'Detail of Beethoven's Hair'も、素人耳にはデタラメに鍵盤叩いてる風もありますが、なんとなくビートが感じられてこれもそれなりに楽しめます。Ligetiの3曲のエチュード(16,17,18番)も悪くないのですが、まだあまり聴き込んでないせいかまだピンときていないところもあります。Tenneyの'Chromatic Canon'は2台ピアノのためのミニマル風の曲(このCDでは多重録音)で、Reichのピアノ・フェイズに似た雰囲気もあるのですが、変化が乏しくやや単調な感じがして(ミニマルに対して単調という物言いもなんですが)ピアノ・フェイズほどの面白さには達していない気がします。その他の曲は、私からしてみるといわゆる「現代音楽」していて、ちょっとついて行けないというのが正直なところ。

というわけで、そこそこ面白い曲もあったのですが、コストパフォーマンス(打率)の面ではもうひとつだったかなというのが全体的な感想です。