BrautigamのBeethovenピアノソナタ集Vol.3

Ronald Brautigam

以前書いたようにRonald Brautigam(ロナルド・ブラウティハム)のフォルテピアノ演奏はあまり私の好みでなく、HaydnもMozartもそれぞれ1枚味見で聴いただけで終わりになっているですが、Beethovenについては彼の指回りの良さが発揮されるのではないかということと、今回リリースされたVol.3には私の好きな第4番が含まれているということで(やはり味見の意味も込めて)買ってみました。収録されているのは第4,5,6,7番の4曲。

当然4番が私の興味の中心になるわけですが、その意味では今回の盤も今ひとつでした。4番の第1楽章では、例によって力強さや推進力、溌剌とした生気といったものを期待するのですが、その点ではBrautigamの演奏はちょっと府抜けた、と言っては言い過ぎですが、どこか煮え切らない感じ。まずsf、fp、アクセントといった、Beethovenの肝ともいうべき指示がなぜかしばしば無視されていますし(こうも確信的に無視されていると、そういう版があるのかと思ってしまいます*1)、ffやppといった強弱のコントラストもあまり目立たず、メリハリが乏しい印象を受けます。

ちなみにこの4番、第1楽章の勇壮快活な雰囲気といい、調性といい、(初期)ピアノソナタエロイカともいうべき存在だと個人的には思っているのですが、そういう声はあまり聞かれませんね(Beethoven自身が気に入っていた曲だという点も近いと思うのですが…)。というかどちらかと言うとあまり人気がない。でも自らGrand Sonataと名づけたり、初めて独立した作品番号を与えたり、かなりの自信作であったのは間違いないと思います。

その他の5,6,7番に関しては、まずまず悪くないという感じです。といっても強く印象に残るとか、繰り返し聴きたくなるというほどでもありませんが。ということでBeethovenのソナタも、当面はこれ1枚でよいかなという感じです。

*1:ちなみに音についても普段聴きなれた版と違うところがあります。