Gavrylyukのマイアミ国際ピアノフェスティバル・ライヴ

Alexander Gavrylyuk

Alexander Gavrylyuk(アレクサンダー・ガヴリリュク)の2005年マイアミ国際ピアノフェスティバルでのライヴは、以前DVDが出ていましたが(私は未視聴)、同じ内容のものが今度はCDでリリースされていたので、曲目的には既出のCDに含まれているものが多いのですが値段も安めということで買ってみました。曲はHaydnのソナタHob.XVI-32、Brahmsパガニーニ変奏曲、ChopinのOp.25-7、Scriabinのソナタ第5番とOp.8-12、Prokofievのソナタ第6,7番、Horowitz編の結婚行進曲。ScriabinとProkofievの6番が今回初めて聴ける曲です。

印象ですが、一言でいうと非常に「活きがいい」です。技巧的に非常にレベルが高いのは言わずもがななんですが、ライヴということでスタジオ録音での「行儀のよい」演奏と比べると、音に勢いがあり、リズムのノリもタッチの瑞々しさも一段と魅力が感じられます。(その分多少瑕もありますが。)特に今回感心したのはBrahms、ScriabinとProkofievの6番。Prokofievの6番は7番以上の難曲ですが終楽章など期待を上回る出来。この活きのよさは若い頃のKissinを思い出させますが、最近のKissinは巨匠路線を着実に(?)歩んでいるのか、どこか考え過ぎというか勿体ぶったような表現が多くて馴染めないこともあるのですが、Gavrylyukがその後をうまく継いでくれているのかも。結婚行進曲も、この間聴いたFanzowitzの楷書的な演奏と比べるとよりヴィルトゥオーゾ的な(悪くい言えばケレン味溢れる)演奏。それにしても、難曲揃いのこのプログラムでこれだけの演奏が見られるなら、DVDの方を買えばよかったかなと少し後悔しているところです。(というか今からでもDVD買おうかな…。)

10代で神童のごとくデビューしても歳をとるにつれて擦り切れて魅力が失われていく例は少なくないですが、少なくともこのCDを聴く限りは彼の勢いは健在。ただジャケ写真をみると、生え際が幾分後退しているというか、前の辺りが多少薄くなっている気がして、そのあたりがちょっと心配です(笑)。