アルペジオーネで弾いたSchubertのアルペジオーネソナタ

Gerhart Darmstadt

アルペジオーネで弾いたSchubertアルペジオーネソナタの録音というと、昔ArchivからLPが出ていたと思うのですが、そのときの評として、この楽器が廃れてしまったのも無理なからん、という感じのものがあって、そんなものなのか(資料的価値しかないのか)と私もあまり深追いはしなかったのですが、今度また新しい録音がリリースされていたので、この機会に買ってみました(この間にもきっと別の録音が出ていたのだろうと思いますが)。演奏はGerhart Darmstadt(ゲルハルト・ダルムシュタット)、フォルテピアノはKlepper、また別の曲ではColellがギター伴奏を務めています。併録としてBeethoven、Spohr、romberg、Burgmullerの小品も含まれています。

初めてということで興味津々で聴いてみましたが、これは私的には「十分アリ」。というか、聴き込むにつれて、これは従来楽器による演奏に負けず劣らずイイんじゃないかと思うようになってきました。確かに音色の美しさではチェロやヴィオラ等の普通の弦楽器には負けるところがあるかもしれませんし、また楽器的な制約からか細やかな表情付けが難しいのかもしれませんが、それでも素朴な音はそれなりに魅力がありますし、また何といってもバロック奏法のように基本的にノンヴィブラート(フレット付きなので当然ですね)でmessa di voce的に歌っていくやり方が私の好みにピッタリです。制約の多いだろうこの楽器でこれだけ聴かせるDarmstadtの技量もなかなかのもの。あと特徴として、これも楽器からくる制約なのか、あるいは奏者の解釈なのかよくわかりませんが、普通は速めに弾かれるパッセージ(たとえば終楽章の第2主題)もかなり落ち着いたテンポで弾かれていて、朴訥とした感じでこれはこれで悪くない気がします。

今後はこの曲もアルペジオーネを使った演奏が主流になる、とはさすがに思いませんが、この曲のファンなら一度は聴いておいて損はないでしょう。(ただし時代奏法にアレルギーのない方。)収録時間が全体で48分と、短いのがやや残念です。