LonquichのFaure/Ravel/Messiaenピアノ曲集

Alexander Lonquich

週末に風邪を引いてしまい、間隔が少し空いてしまいました。

Alexander Lonquich(アレクサンダー・ロンクィッヒ)と言えば、昔EMIから出ていたF.P.ZimmermannによるProkofievのヴァイオリンソナタ集でピアノパートを務めていたピアニスト、ぐらいの認識しかなくて、しかもそのProkofievでのピアノもさほど印象に残っていなかったのですが、実は最近(と言っても去年ですが)ECMからフランス近代ものを集めたソロアルバムを出していることをブログで知って、しかもかなり高評価だったので買ってみました。曲はFaureの即興曲全曲、Messiaenの前奏曲集、Ravelの夜のガスパール

まず全体的に言えるのは、音色やタッチが非常によくコントロールされていること。ECMトーンとでも言いましょうか、ECMは昔からこういう感じの録音が多いと思うのですが、(必ずしも音色が多彩というわけではありませんが)モノクロな中にもシルクのような滑らかと繊細さが感じられます。MessianなんかでもBeroffのような鋭利で刺激的な音ではなく、怪我のないようにエッジや表面がしっかり研いである、そんな感じの音です。これはなかなかの技量と言えるでしょう。その意味で印象に残ったのがRavelのオンディーヌや絞首台。抑えた表現の中にも細部まで緻密に弾き込まれている雰囲気があります。スカルボも技術的にレベルが高く緻密なのですが、あまり技巧を前面に出すタイプではないので(RavelがIslameyに対抗して書いたという意味においては)そういうものを期待している向きには多少物足りない点はあるかも。

あと問題はRavel以外の曲は私があまり詳しくないことで(^^;)、Faureについては例によってあまり得意な作曲家でなくて、今回の即興曲も、聴いてみれば綺麗だしそこそこ面白いと思うのですが、もっと深く聴き込んでみようという気になれないのが正直なところ。(これは演奏がどうのというより私の趣味の問題。)Messiaenも第8番などのようにリズミカルな曲はいいのですが、静寂系(あるいはformless系?)というか、Debussy-Messiaen-武満と繋がっていくような系統の音楽は掴みどころがなく感じで苦手です。

ともあれ、Lonquichは今後も押さえておいて損はないピアニストと言えそうです。