RampeのMozartクラヴィーア曲集

Siegbert Rampe

時代楽器によるMozartのクラヴィーア作品の演奏では、最近Siegbert Rampe(ジークベルト・ランペ)によるものがその大胆な解釈で割と話題になっている(今月のレコ芸吉田秀和のエッセイでも触れられていました)そうで、これは1回は聴いてみないといけないかな、ということで買ってみました。今のところまだ3枚しかリリースされていないようなので、とりあえずその中で収録曲が一番好みのVol.2を購入。曲はソナタの第12番(K.332),16番(K.570),17番(K.576)、幻想曲ニ短調K397、ソナタK.12などです。

Rampe盤の特徴として、時代楽器といってもフォルテピアノだけでなくチェンバロクラヴィコードも使っていて、しかも作曲年等によって楽器を決めるというわけではなくRampeの趣味(?)で選んでいるようで、このCDでも幻想曲と17番はチェンバロ、12番はクラヴィコード、16番はフォルテピアノとなっています。(ちなみにRampeはMozart以外のCDでもこの3種の楽器とオルガン、ヴァージナルなどを使い分けることが多いようです。)

演奏の方ですが、思っていたほどは大胆ではなかったかな。確かにリピートの際に自由な装飾(変奏)を加えることはやっていますが、これはそれほど珍しいことではありませんし、最近聴いたOort盤でも一部の曲でやっていました。ただ変奏の頻度と量は確かに多いです。大胆さで言えばSteier盤なんかの方がすごいのですが、正直Steier盤はやり過ぎと思っていて、その点Rampe盤は、確かにMozart時代はこのくらいのことはやっていたかも、という感じがします(要するに演奏にauthenticityが感じられます)。むしろ興味深いのは使用楽器で、幻想曲での冒頭部分などはチェンバロの残響の多い響きがピッタリという感じがしますし、ソナタでも楽譜に指定がなくても和音をアルペジオにバラして弾くあたりはさすがにチェンバロ奏法のツボを押さえている感じがします。クラヴィコードで弾いたMozartのソナタというのも初めて聴きましたが、アクセントもしっかりついていて好印象です。

ちなみに幻想曲K.397では、最後のMullerによる補筆の部分は弾かず、そのままK.576のソナタにつなげているのはビックリ。もともとのタイトルが'Fantasie d'introduction'であり、何かの曲の導入部であるらしいからとのことです。(それがK.576かはわかりませんが。)