Bart van OortのMozart鍵盤作品全集(その2)

Bart van Oort

Bart van Oort(バルト・ファン・オールト)のMozart鍵盤作品全集(14枚組)ですが、その後も聴き進めて、ソロ作品については一応聴き終わりました。ソナタの感想は以前書いた通りですが、そのほかの作品(変奏曲、幻想曲、ロンド、前奏曲、その他もろもろ)についても、まあ予想通りというか、普通に良いという感じです。ただその中でCD10の'Miscellaneous Keyboard Works'(種々雑多な作品集)と題する1枚が特に印象に残りました。

まず冒頭に収められている「後宮からの逃走」序曲の鍵盤楽器向け編曲K.384(世界初録音だそうです)が目の覚めるような演奏です。とにかく活きがいい。特に最初のtutti部分の左手はその激しさに驚かされます。前回のソナタのときの感想で、フォルテのところはもう少しガツンとやってもいいのではないか、と書きましたが、ここでは十二分にガツンとやっていて、まさにこういうのを期待していたという感じです。Mozartのクラヴィーア曲というと、(特に現代ピアノで演奏する場合は)とかく優美さとかロココ的な玉を転がすような音が重視されているようですが、私はむしろ溌剌さとかドラマチックな表現がより大事だと思っていますし、Mozart自身もそういう表現を求めていたのではないでしょうか。(もちろん現代ピアノでは思いっきりフォルテをぶちかましてはいけないのですが、時代楽器であればセーブしないでもそれがMozartの想定した音でしょう。)そのほかの曲では前奏曲K.624(これも世界初録音)やカプリッチョK.395も印象に残ります。いずれもJ.S.Bachの半音階的幻想曲とフーガの幻想曲部分を思わせるような即興的、トッカータ的な曲なんですが、Mozartの有名なほかの幻想曲と同じくらい演奏されてもよさそうな感じです。(ライナーでは、K.395はあまりMozart的ではないと書かれていましたが。)その他ではコントルダンスK.534(これも世界初録音)も何かの序曲のような元気な曲で面白いのですが、非常に短い(50秒足らず)のが残念。

残りは4手or2台ピアノ作品ですが、これは次の機会に。