Boris Giltburgのデビュー盤

Boris Giltburg

EMIの'Debut'や'Argerich Presents'シリーズは(HMFの新進演奏家シリーズと並んで)比較的廉価で新しいピアニストを知ることができ、割と重宝しているのですが(粒揃いという点ではHMFの方が上かな)、また新たにCDがリリースされていたので聴いてみました。Boris Giltburg(ボリス・ギルトブルグ)という1984年生まれのピアニストで、収録曲はMussorgskyの展覧会の絵、Scriabinのソナタ第2番、Prokofievのソナタ第8番と、大曲を並べています。

感想なんですが、全体的にはいま一つというところでしょうか。そこそこまとまってはいるのですが、これといった印象を残すにはちょっと押しが弱いです。まず展覧会の絵は、先日聴いたLibetta盤よりはよほどマシなんですが、技術的には「手堅い」という印象以上のものはあまりなく、音楽的なセンスや解釈の点でも特に秀でているという感じはしません。あえて言えば優等生的で、そういう意味では同じく'Debut'シリーズで去年聴いたAshkar盤と似た傾向なんですが、それより曲の難度が高いだけに万全というわけにはいきません。Scriabinのソナタに関しても、第1楽章では音色や響きの豊かさの点で幻想性がやや不足、第2楽章はキレ、躍動感の点で不満が残ります。どこかこぢんまりとして、フッ切れたところがあまり感じられません。Prokofievの8番ソナタの第1楽章も同様です。ただ終楽章は、中間部のAllegro ben marcatoやAndantinoの部分でサクサクと快速に進むところが新鮮で、これは面白いかも、と思ったのですが、最後のメカニック的に非常にきついところに入るとタメが入ったりテンポが落ちたりして、技術的限界が見えてしまった感じがあります。(もっともこの部分は、既存の録音に満足できなくて自分で打ち込みをやって聴いていたくらいなんで容易に満足できないんですが。)

EMIの'Debut'シリーズも、結構買っている割には強く印象に残っているのはTrpceski盤やLeschenko盤くらいで、実は打率はそれほど高くない感じです。