LibettaのCzerny 50番練習曲

Francesco Libetta

気になるピアニストの一人であるFrancesco Libetta(フランチェスコ・リベッタ)がCzernyの'指使いの技法'Op.740(いわゆる50番練習曲)全曲のCDを出したということで、迷いながらも買ってみました。Czernyの練習曲というと、(効用の点はともかく音楽的には)無味乾燥の代名詞みたいに言われていて、鑑賞に耐えられるのか、なんて思ってしまうのですが、Libettaはコンサートでも全曲演奏したこともあるらしく、何が彼をそこまで駆り立てるのかわかりませんが、そこまで思い入れがあるなら聴いてみる価値があるかも、というわけです。

50番練習曲のCDというと、少し前にOldenburgが50曲中30曲を録音したものがBrilliantから出ていて、それも手元にあったのでついでに聴き比べてみたのですが、Oldenburgの方は確かに指回りはしっかりしているのですがいかにも機械的というかMIDI的な(Mozart風に言えばtasteもfeelingも感じられない)演奏なのに対し、Libettaの方は確かに軽やかなタッチで表情がより音楽的な感じです。ただ問題として、(彼の他の録音でもときどき感じられるのですが)タッチが浮ついているというか埃っぽいというか、ぶっちゃけ粒が揃っていないところがあって、そこはイマイチです。(感覚的に言うと指が鍵盤に貼り付いているような安定感があまりない。)というわけで細部の精密さよりも音楽の流れやスピード感を優先した演奏とも言えそうですが、10番の3度の練習曲など(3度の得意なLibettaにしては)流麗さの点でも難がある演奏もあって(もっともOldenburgの演奏ももう一つの感はありましたが)、わざわざCzernyの練習曲を録音するなら誰もが納得&感嘆するような完成度の高い演奏だったらよかったのにな、と思ったのも確かです。