Bart van OortのMozart鍵盤作品全集(その1〜ソナタ)

Bart van Oort

以前購入報告したBart van Oort(バルト・ファン・オールト)のMozart鍵盤作品全集ですが、まずはソナタ(を含むCD)を一通り聴いたのでその感想を。

全体的な印象としては、最初の味見のときに書いた通りまずまずと言うか悪くないのですが、期待の高さからするともう一押し欲しいかな、という感じもあります。(もっとも以前書いたように私はVesselinova盤を気に入っていて、その刷り込みの影響もあると思いますが。)良い思ったのはアゴーギクに関してで、あまりサラサラ流れ過ぎず、フレーズの頭でのためらうような適度なタメや、ここぞというところでの臨機応変かつ自然な加減速など、これによって全体的にしなやかな印象を与えます。一方やや不満が残ったのが強弱で、なだらなか起伏の面ではよいのですが、アクセントとかfとpの交替とか、コントラストの部分がやや不足しているかなという気がします。ときには楽譜の指定を無視しているかのようなところも見受けられて、まあこのコントラストの少なさによってより優美さが感じられるわけですが、個人的にはMozartといえどもフォルテではもう少しガツンといって欲しいところです。

そんな中で今回特に印象に残ったのは第8番(K310)と第14番(K457)の短調の2曲。これらの曲に関してはダイナミックスに関する不満もあまりなく、そのツボを押さえたアゴーギクと相まってドラマチックに仕上がっています。8番の第2楽章の中間部など、この演奏を聴いてその魅力に改めて気付かされた面もあります。この2曲は(ソナタに関しては)今回の最大の収穫と言えそうです。(多分今後の愛聴盤になるでしょう。)