DemidenkoのMoazrt&Vorisekのピアノ曲集

Nikolai Demidenko

またまたDemidenkoネタですが、今回は新譜でMozartとVorisekのピアノ曲。ロンドンのウィグモアホールでのライヴ録音です。曲はMozartのアダージョK540、アンダンテK616、アレグロK400、ソナタイ短調K310、Vorisekの幻想曲風ソナタOp.20と6つの変奏曲Op.19。

DemidenkoのMozartは多分初めて聴くのですが、収録曲はK310以外はあまり聴く機会のない渋〜い曲。例によって彼らしいこだわりが感じられます。印象としては繊細かつ溌剌、特に変わったことはしていないのですが細部まで非常によく磨かれた完成度の高い演奏と言えます(ライブのなので瑕は皆無とは言いませんが)。K310のソナタは、もう少しドラマチックな表現をしているかなと思いましたが意外とさっぱりとした演奏。第1楽章での右手の16分音符の走句が小気味よいです。K616は音域が高音部主体でオルゴール音楽を思わせるような風変わりな曲だなぁと思ったら小型の自動オルガンのために書かれた曲とのこと。ここでもDemidenkoのクリスタルような音が印象に残ります(ちなみにピアノはいつものようにFazioli)。

一方のVorisek(1791-1825)は余りよく知らない作曲家で、多分Demidenkoの演奏でしか聴いたことがないのですが、Hyperionから出ているウィグモアホールライヴでも(曲は違いますが)弾いていて、彼のお気に入りの作曲家なんでしょう。Op.20はBeethovenの初期とMendelssohnを足して2で割った感じの古典美的な曲で、終楽章はMendelssohnの幻想曲Op.28(スコットランドソナタ)の終楽章にも似た雰囲気があります。全体的には(特に第1楽章に関しては)Mendelssohnの幻想曲の方がより魅力的かなという感じですが、ただ第2楽章(スケルツォ)はリズムがBeethoven的で面白いです。変奏曲Op.19では細かいパッセージでのDemidenkoの指捌きがいつもながら見事。

というわけでいずれも大曲・難曲の部類ではないのですが、こういう愛らしい曲でも手抜きをせずにきっちりと聴かせてくれるのはさすがDemidenkoの職人魂と言えるでしょう。(ただ個人的には曲の終わりにときどき入る拍手はない方がよかったかな。)