Tzimon BartoのRameau鍵盤曲集

Tzimon Barto

Tzimon Barto(ツィモン・バルト、ちなみに本名はJohnny Barto Smith Jr.)と言えば、以前EMIから結構CDを出していて、私の好きなピアニストの一人なのですが、このところはCDのリリースもだいぶ御無沙汰でどうしているのかなと思ったら、Jean-Philippe Rameauの鍵盤曲集という意外なCDを出してきました。Rameauは普段はあまり積極的に聴こうと思わない作曲家なんですが、Bartoが弾いているということで興味津々で買ってみました。曲はクラブサン曲集第1巻(1706)から4曲、クラブサン曲集(1724)組曲ホ長調から7曲、同じく組曲ニ長調から4曲、新クラブサン曲集(1728)から6曲。もちろんピアノで弾いています。

上で書いたようにRameauはあまり詳しくないのですが、それでもこの演奏はちょっと普通じゃないということがわかります。誤解を恐れず一言で言えば「ウルトラ・ロマンティック」とでも言いましょうか、とにかく「濃い」です。ライナーノートで彼自身が「1つのフレーズの中でどの2つの音も同じように響かせたくない」とか「pppからfffの間に36の音色を持っているのが自慢」とか言っているだけあって、普通の意味でのバロック的な演奏ではなく、幻想的で、1音1音に彼の異常なこだわりが感じられます。でもまあ彼はEMI時代から普通でない解釈をしていたので、変わらないと言えば変わらないのですが(笑)。組曲ニ長調のLes soupirs(ためいき)など、消え入りそうな弱音、止まりそうなくらいなゆっくりなテンポと病的なくらいです。

同じくピアノで弾いた演奏ではTharaud盤が手元にあったので、曲がかぶっている新クラブサン曲集を聴き比べてみたのですが、Tharaud盤が至極真っ当な演奏であるのに対し、Bartoのはアゴーギクや音色の変化など表情付けがたっぷり、人によっては好悪を分けると思いますが、個人的にはむしろBartoならこれくらいやってくれないと却って肩透かし、というわけで嫌いではないです。Barto節健在、というところでしょうか。