Freddy KempfのJ.S.Bachパルティータ集

Freddy Kempf

Freddy Kempfフレディ・ケンプ)は'97年の浜コンで聴いて以来気になるピアニストの一人なんですが、今日は彼の新譜のJ.S.Bachのパルティータ集(第4,6番)の感想を。彼のリリースしたCDは、デビュー盤のSchumannRachmaninovはなかなか良いと思ったのですがその後に出たLisztやChopin, Prokofievなどは(全部聴いたわけではありませんが)個人的にはあまり感心していなくて、というのも勢いやノリは確かによいのですが細部になると怪しくなったり荒っぽくなったりしてと、一言でいうと雑っぽい感じがして、それで今回のBachもちょっと不安が残るのですが好きな曲ということで買ってみました。

全体的な印象としては、なかなかよかったです。確かに急速な曲では自分の技を見せつけたいという衝動にかられるのかかなり速めのテンポをとって、それがちょっと慌しいというかやや上滑りした感じがなきにしもあらずですが(もう少し「間」や落ち着きがあってもよい)、基本的に指回りに不安はありませんし、明晰でスマートなBachです。緩徐曲でも妙に深刻になったり沈滞することなく、あくまで自然な歌が流れているのはやはり彼の美点と言えるでしょう。(浜コンで彼を「センスの固まり」と評した所以です。)特に6番のサラバンドは結構気に入りました。

少し残念なのは(最も長い4番と6番の組み合わせということで)2曲しか入っていないこと。パルティータ集であればやっぱり1枚に3曲は入れたいところです。でも続編が出たら(多分出ないと思いますが)また買ってみたいという気にさせる出来でした。少なくとも最近(と言っても半年前ですが)に聴いたTiberghienのパルティータ集よりは私好みと言えるでしょう。