Johan Ullenのオムニバス盤

Johan Ullen

スウェーデン出身のピアニスト、Johan Ullen(ユーハン・ウレーン)による興味深そうなCDが出ていたので買ってみました。曲はLisztのノルマの回想、Alkanのイソップの饗宴、Chabrierの10の絵画的小品より3曲(木陰で, 牧歌, スケルツォ・ワルツ)、Ravelの夜のガスパールと、腕に自慢がありそうな選曲です。(ちなみにLigetiのエチュードなどで有名なFrederic Ullenとは別人です。)

まずノルマは演奏時間が20:42と手持ちの中では多分最長。ということでかなり遅めのテンポをとっています。ただ、速く弾けないから遅く弾いているという感じではなく、急速部分では通常通りテンポアップしますし、歌う部分ではじっくりと自分の納得のいくテンポをとっているということでしょう。最難の「戦いだ!」の部分もまずまず健闘しています。ただその前のアルペジオの嵐の部分はややスケール感に欠ける感じがありますし、また録音のせいなのか全体に音が硬めで、(音が明晰なのはいいですが)歌う部分ではもう少し柔らかい音色も欲しいところです。次のイソップはひと言で言うと堅実な演奏。Hamelinなどの演奏を聴き慣れているような人にはちょっと物足りなさを感じるかもしれませんが、初めて聴く人にはまあ曲の面白さを伝えているのではないでしょうか。次のChabrierはあまり詳しくない曲ですが、手近にN.Cole盤があったので聴き比べてみるとこれは悪くない演奏。最後のRavelは今までと比べるとちょっとイマイチで、まずこれもテンポが8:33/7:53/11:13とかなり遅めです。(比較として例えばLortie盤だと6:36/6:36/8:50です。)その遅さに見合う充実感があればよいのですが、やはりちょっと堅実さだけが目立ち、また音の滑らかさにもやや欠けるようです。

というわけで(それほど悪くはないのですが)期待ほどの演奏ではなかったというのが正直なところでしょうか。少なくともFrederic Ullenほどのテクニシャンではなさそうです。