Roger Wrightの2000年シドニー・コンクールライヴ

Roger Wright

またまたシドニーコンクールネタで、今回は2000年の時のもの。前にも書いたように2000年のソロ・ハイライト集は既に持っていたのですが、このCDはこれまで見過ごしていたもの。Roger Wright(ロジャー・ライト)という米国のピアニストの演奏をまとめたものなんですが、何でも彼がQuarter Final Stageで落ちてしまったためにオーストラリア中から抗議が殺到し(コンクールの模様はラジオ放送されていたらしい)、そのため急遽作成されたCDだそうです。何か出来すぎた話で胡散臭そうな気もするのですが、値段も安かったので買ってみました。曲はSchumannの花の曲Op.19、HaydnのHob.XVI-48、Chopinのソナタ第2番、RachmaninovのOp.39-9、Liebermann(1961-)のGargoyles Op.29、Sculthorpe(1929-)の'Between Five Bells'(コンクール委嘱作)、Fabregas(1955-)のMirageなどなど。

実はそれほど期待せずに聴いてみたのですが、これがなかなかの好演です。まず最初のSchumannを聴いて、(あまり詳しくない曲なのですが)音色のコントロールが巧みで自然な歌心がある人だということがわかります。Chopinのソナタも、特段に凄いテクニックを持っているというわけでもないのですが、音が充実してますし、やはり音楽性を感じさせます。そして個人的に最も印象に残ったのがLiebermannのGargoyles。これは余りなじみのなかった曲なのですが、第1,4曲でのProkofievを彷彿とさせるような打撃系の曲が私の好みのツボを刺激し、かなり気に入りました(短いのが残念ですが)。この曲はHoughの有名な'The Piano Album 2'の中にも収録されているのですが、そちらはあまり印象に残っていなくて(実のところライナーでHoughも録音しているというのを読むまで気が付かなかった(笑))、実際Houghの方を聴き直してみたのですが、Wrightの方がメリハリがあって断然面白かったです。個人的には今回この演奏が聴けただけでもこのCDを買った価値があったという感じです。

彼が本選に進めなかったという審査結果の妥当性はともかく、確かに良いピアニストであることは疑いないようです。