Urasinの2004年シドニーコンクールライヴ

Rem Urasin

先日は2004年のシドニー国際ピアノコンクールのソロハイライトを取り上げましたが、その続きで同年のRem Urasin(レム・ウラシン)のコンクールライヴを。曲は本選で弾いたTchaikovskyの協奏曲第1番と、予選で弾いたTchaikovsky/Pletnevの組曲くるみ割り人形」。前に書いたように本来はソロと協奏曲のCDは分かれていて、他の入賞者は協奏曲だけが(1CDに2人分×2枚)入っているのですが、Urasinだけはこの1枚に協奏曲とソロが収録されていて、これはひょっとして選者の彼に対する評価の高さではないかと少し期待させます。ちなみに彼は本コンクールでは第2位でした(併せて聴衆賞も受賞)。

で、聴いてみたのですが、まず協奏曲の方はもうひとつという感じです。もちろん大きな破綻や瑕疵はないのですが、ちょっとしたミスがポロポロありますし、まあそれはライヴなのである意味仕方ないのですが、それよりむしろ全体的にやや平凡というか、これといった魅力があまり感じられないのが痛いところです。実のところ私はこの曲がそれほど好きではない(コンクールでこの曲が選ばれてたりすると、少しがっかりします)ので、そのあたり多少辛めになってしまうのかもしれませんが。でも彼が下馬評では本命視(?)されていたにもかかわらず1位を取れなかったのは、審査員もそのあたりを感じたのかもしれない、と思ったりもします(他の人の演奏を聴いていないので本当は何とも言えませんが)。

一方のくるみ割り人形の方は、さすがに彼の十八番('97年の浜コンでも終曲のアンダンテ・マエストーソを弾いていました)だけあって持ち前のテクニックが発揮されたなかなかの演奏です。ただ彼は'99年にもこれをスタジオ録音していて、それと比べるとライヴだけに多少より生き生きしている気もするのですが、気がする程度で、逆に細かい瑕は明白にあって、総合的にはスタジオ録音の方に軍配を上げたくなります。まあ'99年盤は(多分)入手が難しくなっているので、Urasinのくるみ割り人形を聴くには悪くない盤でしょう。