TetzlaffのBeethovenヴァイオリン協奏曲

Christian Tetzlaff

前回に続いてシドニー国際ピアノコンクールネタを書こうかと思いましたが、その前に旬の話題ということで新譜の感想を。Tetzlaff/ZinmanのBeethovenヴァイオリン協奏曲です。

以前ここにも書いたようにTetzlaffは私の好きなヴァイオリニストの一人なんですが、彼の弾いたこの協奏曲の録音にはGielen指揮南西ドイツ放響との旧盤があり、私の愛聴盤にもなっています。ただ一つ残念なところがあって、この旧盤では通常と少し違う版(Beethovenの自筆草稿に従った版だそうです)を使っているのですが、それが通常聴かれる版に比べると、例えば展開部でのパッセージなど、ちょっとシンプルというか素朴すぎてやや魅力に欠けるかな、というところがあります。(ちなみにカデンツァは作曲者自身によるピアノ協奏曲編曲版のものを使用。Kremerなどもやっていますが、これは大いに結構。)そんなところにも注目して聴いてみました。

で、感想ですが、結論から言うと旧盤の方がよかったな、という感じです。今回は自筆草稿版を使っていないようですが、それ以前の演奏の部分で、全体的に激しいとまではいかないまでも、ちょっと身振りが大きい演奏になってしまっていて、旧盤のようなクールでスマートなところがちょっと後退したという感じです。フレーズ内での緩急も大きくなって、旧盤に比べるとちょっと弾き崩した印象も受けますし、ヴィヴラートの付け方も旧盤の方が品があったように思います。またヴァイオリンの音に関しても、旧盤の方が滑らかで、今回は少しザラついたところがあるように思います。終楽章での技のキレなども、正直、旧盤の方が上手かったな、と感じます。ちなみに第1楽章カデンツァは旧盤と同様、ピアノ協奏曲版を使っていますが、ただ全く同じというわけではなく、旧盤より短くなっているようです。ところでこのカデンツァなんですが、ティンパニがもう一人の主役のはずなんですが、録音のせいかこのティンパニの音がやけに小さく録られていて、少しもったいない感じがします。

というわけで、個人的にはやや期待はずれの一枚ということになりそうです。今後の私の「Tetzlaff好き度」にも影響を与えるかもしれません(笑)。