2004年シドニー国際ピアノコンクール・ソロハイライト

Sydney competition solo highlights

4年ごとに行われるシドニー国際ピアノコンクールは、ハイライトCDが毎回、かどうかはわかりませんが少なくもと'96年以降は出ていて('92年は優勝したXiang-Dong KongのライヴCDがありますが)私も'96年と2000年のは持っているのですが、そういえば前回の2004年のはまだ買ってなかったな、ということで入手してみました。(ちなみにこの回はネットでのライヴ放送もあったようですが、私は聴いていません。)

このハイライトCDの特徴として、ソロ曲を集めたものと本選のコンチェルトが別になっていて、ソロ曲の方は審査結果に関係なく予選で選者が良いと思った演奏が収められています。(ちなみに選者は審査員ではなく、例えば'96年はCDプロデューサが選んでいます。)つまり1次で落ちたような人でも、光る演奏があれば入るわけで、個人的にはなかなかいよいシステムだと思います(選者のセンスが問われますが)。

で、今回のソロ・ハイライトCD(3枚組)を聴いてみたのですが、残念ながら収録曲が多い割には印象に残る演奏、あるいはは繰り返し聴きたくなるような演奏は少なかったかな、という感じです。その中で面白いと思ったのは、まずV.McLean(前回の浜コンにも出てました)の弾くF.GuldaのソナチネからEntree。Jazz風の軽快なテンポのノリのよい曲で、正直Guldaの曲はこれまでほとんど聴いたことがなかったのですが、これは魅力的な曲です(今回の最大の収穫かも)。他には後藤正孝君の弾くHandelシャコンヌト長調。これもあまり聴いたことがなかった曲なのですが伸びのある音で溌剌とした演奏。あとはJ.Gillhamの弾くトッカータBWV911も好演です。(ちなみに以上の人はいずれも入賞していません。)優勝したJ.ChenはBeethovenソナタ第18番(第1楽章)やイスラメイなどが入っていますが、個人的にはもうひとつ('Best Performance of a Work by Beethoven'賞ももらっているようですが)。むしろやはり入賞しなかったS.Wilkの弾くSchumannアラベスクやイゾルデの愛の死などでの暖かみのある音や歌が印象に残ります。入賞していないにもかかわらず3曲も入っているので選者も気に入っているのかもしれません。(と言っても審査結果に疑問があるとかそういうことでは毛頭なくて、実際にホールで聴くのとCDで聴くのでは印象は大きく違うでしょう。)

ところで、昔音コンで優勝した高田匡隆君も1曲、ScarlattiのK162が入っているのですが、これが意外と落ち着いたというか慎重な演奏で、留学先で奏法を変えたと聞いていますが、確かに音コン時のバリバリ技巧派の面影はあまり感じませんでした(といってもこれ1曲では判断できませんけどね)。