Tarasovの'89年ライヴ

Sergei Tarasov

今日はSergei Tarasov(セルゲイ・タラソフ)の'89年ライヴ盤について。Tarasovは同じ年にA&Eからスタジオ録音盤が出ていて、そちらは私のお気に入りのCDなのですが、こちらのライヴ録音の方は収録曲がA&E盤のサブセットになっている上、評判もさほど良くないみたいなので今まで保留していたのですが、マイナーレーベルでもありいつ廃盤になってもおかしくなさそうなのでこの機会に買ってみました。曲はSchubert/ソナタ第13番、Liszt/メフィストワルツ、Tchaikovsky/ドゥムカ、Rachmaninov/音の絵Op.39-1、Scriabin/幻想曲。A&E盤からはBrahmsパガニーニ変奏曲とRachmaniovのOp.39-5が抜けています。(またSchubertではリピートを省略してます。)

感想としてはそれほど悪くないという感じです。A&E盤ほどの完成度と音質の良さ(A&Eは優秀録音でした)はないものの、ノリというか勢いの良さはライヴだけにそれ以上で、熱気が伝わってきます。特にメフィストワルツの前半の迫力や音の立ち具合はA&E盤以上でしょう('90年のチャイコンではBerezovskyのイスラメイかTarasovのメフィストかと言われていた(?)そうですが)。ただ反面、中間部や後半はちょっと荒さが目立ってきて、例の重音トリルはちょっと怪しいし、有名な跳躍部での和音連打も(A&E盤でも多少そうでしたが)音がルーズになっているなど、気になるところが出てきます。(ちなみに跳躍部の直前では断弦してます。それで動揺したわけでもないでしょうが。)他の曲も多かれ少なかれその傾向はあるようです。たださっきも言ったように(オン気味でやや大味な録音のせいもあってか)打鍵の気迫はA&E盤以上で、逆にこちらから先にに聴いた人はA&E盤を聴いたら何だか大人しいなと思うかもしれません。というわけで、抒情性や音の美しさの面も含めて全体としてはA&E盤には及ばないかもしれませんが、あちらが現在廃盤なだけにTarasovの魅力を垣間見るという点では悪くないCDだと思います。逆にこれであまりピンと来ないのであればA&E盤を聴いても同じなのかもしれません。

ところで、Tarasovは何年か前に自動車人身事故を起こして(2人死んだらしい)刑務所に入ったとかいう話を聞いたことがあるのですが、現在はWebの情報だとコンサート活動も行っているようです。今はどんな演奏をしているのか機会があったら是非聴いてみたいものです。