CechovaのSmetanaピアノ曲集

Jitka Cechova

今回も新譜の感想で、Jitka Cechova(イトカ・チェホヴァー)のSmetanaピアノ曲集です。曲目はマクベスと魔女、好奇心の強い男(Schubertの美しい水車小屋の娘より編曲)、ポルカ・ラプソディー、ベッティーナ・ポルカ、演奏会用エチュードハ長調ポルカの形式によるボヘミアの思い出Opp.12-13、海辺にてOp.17、チェコ民謡にもとづく協奏幻想曲。

Smetanaのピアノ曲は私もあまり馴染みがないのですが、唯一の例外が演奏会用エチュード「海辺にて」で、これは(頻度はそれほどでもないですが)たまにコンサートの曲目に上っていると思います。私がこの曲を知ったのは前々回の浜コン1次でのTcherepanovの演奏で、それ以来お気に入りです。Lisztばりの技巧的な曲で、繰り返される伴奏音型の上でメロディーが奏でられるところはLisztのため息と似た雰囲気がありますが、(メロディーの美しさはため息に譲るかもしれませんが)技巧的な激しさやスケールの大きさはこちらの方が上でしょう。スウェーデン滞在中に見た海の印象を表しているそうですが、確かに激しく寄せては返す波の様子を思わせます。ただあまりCDは出ていないようで、今回この曲も含めてSmetanaの他の技巧的な曲が纏めて一枚になっているということで購入してみました。

聴いた感想ですが、海辺にて以外にも演奏会用エチュードハ長調や協奏幻想曲など(海辺にてほど好きになるかはわかりませんが)なかなか面白い曲もありました。協奏幻想曲の前半に現れるパッセージなどThalbergを彷彿とさせます。演奏の方は、粒立ちのよいクリアな音で曲の良さをまずまず伝えていたと思うのですが、ただ全体的にちょっと硬い感じで、さらに滑らかさや繊細さ、あるいはスケールの大きさがあったらなというところです。あまりヴィルトォオーゾあるいはテクニシャンという感じはしません(ちなみに彼女のShostakovichのピアノ協奏曲第1番も聴いたことがあるのですが、そちらはちょっと冴えない演奏)。そして問題の海辺にては、これもまあ悪くはないのですがもう一押し欲しい感じ。本来はクライマックス部に向けて徐々に盛り上げていって、そこで爆発させるという演奏設計になると思うのですが、盛り上げていく部分がやや平板で、クライマックス部分で唐突に激しくなっている感があります。この後でTcherepanovの演奏を聴き直してみたのですが、テクニックの流麗さやスケールの大きさ、クライマックスでの畳み掛けなどいずれも素晴らしく、この曲の魅力を最大限に引き出していた演奏だったのだなと再認識した次第です。

ともあれ、Smetanaのヴィルトゥオーゾ的な曲がコンパクトに纏まったCDということで(ポルカ集などのCDは結構出ているようですが)、悪い買い物ではなかったと思います。演奏がもっと冴えていればさらによかったですが…。