KuzminのSchubert

Leonid Kuzmin

最近、と言っても結構前からですが、廃盤になったと思われるCDもamazon等の中古品も扱っているネットショップで割合手軽に手に入るようになり、便利な世の中になって結構なことです。今回取り上げるLeonid Kuzmin(レオニード・クズミン)のSchubert曲集も、昔店頭で見たときは迷った挙句にそのままにしていたらいつの間にか廃盤?(かどうかは実のところ私もよくわからないのですが)になってしまったのですが、ふとネットショップを見てみたら普通に中古で売っていたのでこの機会に買ってみました。曲はさすらい人幻想曲ソナタ第17番(D850)、Liszt編のウィーンの夜会第6番です。'93年録音。

聴いてみたのですが、ひとことで言うといつものKuzmin節とでも言いましょうか、ハジけてるというか、やんちゃしてます。さすらい人は全体的にテンポが速く、息つく暇もなくガンガンバリバリ、気持ちいいくらいにピアノを鳴らしていて、彼のRachmaninovソナタほどではありませんが、それと似た雰囲気があります。特に第3楽章などの指回りのよさは一種の爽快感があります。ただこの曲は(Schubert自身も弾けなかったと言われているほど)技巧的な曲であることは確かなのですが、個人的にはもう少しBeethoven的というか、端正で一音一音を大事にするアプローチの方が好みかな、というところです。また録音のせいか音にしまりがないというか、音が整理されていない感があって、少し気になります。一方ソナタD850もやはり第1楽章が速い速い。先へ先へと突き進むようにバリバリと弾き切って、第1楽章が終わったときはなにか嵐が過ぎ去った後のような気分になります。実は私はこの第1楽章があまり好きではないのですが、この演奏は結構新鮮というか、この楽章の魅力はこういうところにあるのかもしれない、と思わせてくれました。(でも多分この楽章が好きな人は慌しく感じるでしょう。)

というわけで、愛聴盤とまではいかないかもしれませんが全体的に面白く聴けました。