佐藤卓史の『Chopinの夕べ』

前回に引き続いて今回も佐藤卓史の自主制作盤です。前回も少し触れた『Chopinの夕べ』と題する2枚組CDで、曲は前奏曲Op.45、ワルツOp.42、舟歌夜想曲Op.48-2、エチュードOp.10-1, 25-5, 25-10、スケルツォ第4番、ポロネーズ第5番、マズルカOp.33、ソナタ第3番。昨年の9月のコンサートライヴで、行われたのがChopinコンクールの直前ということで、(予備予選で弾いた曲は知らないのですが)彼が1次、2次で弾いた曲はすべて含まれているようです。予行練習を兼ねたコンサートというところでしょうか。

内容ですが、今度はさすがにコンクール直前ということで準備万端なのかミスはそれほど目立たず、また2枚組ですが時間はトータル90分強と普通のコンサートくらいなので、前回のような終盤での疲れ(?)も出ていないようです。個人的に一番気に入ったのは最後に入っているソナタ第3番で、全体的にはやはりスッキリさらっとしていますが、第1楽章の第2主題など歌も十分にあってなかなかの好演。特に終楽章は彼らしいテクニックの冴えが見られ、この楽章に関してはBlechaczのショパコン時の演奏よりも私好みです(Blechaczの終楽章はちょっとタメが多すぎる感じ)。他では10-1やスケルツォ第4番(音コンでも弾いていた彼の得意曲?)、ポロネーズ第5番などもなかなかです。ただ10-1は途中のミスが惜しく、スケルツォは中間部でもう一段の歌が欲しいところ。舟歌もまずまずなのですが、Blechaczと比べると歌のセンスに関してはやはりBlechaczの方が上ですね(特に最後の盛り上げ方など)。また全体的に、さらにタッチの多彩さがあるとよいかなと思いました。ともあれ今後の活躍を期待したいところです。

最後にどうでもよいことですが、ソナタの終わりで一人だけフライングの拍手をしていて、まあフライングの拍手はよくあることなのですが(ショパコンでのBlechaczの本選なども凄い)、一人だけ入るはちょっと間が抜けた感じで、こういうのは一斉にワーっと入らないと様にならないなと思いました(笑)。