Joyce Yangのクライバーンコンクールライヴ

Joyce Yang

今年行われた第12回Van Cliburnコンクールで第2位だったJoyce Yang(ジョイス・ヤング)のコンクールライヴです。収録曲がJ.S.Bachのフランス風序曲、Lisztのドンファン幻想曲とハンガリー狂詩曲第6番、Vineピアノソナタ第1番という、私の好みにかなりフィットしていたものだったので思わず買ってしまいました。他に1位のKobrin、3位のSa Chenのも出ていますが、とりあえずはペンディング。ちなみにYangは韓国出身の19歳の女性ピアニストです。

全体的な印象としては、コンクールライヴということもあるでしょうが、変に縮こまらず、音に張りがあって思い切りのいいピアノです。技巧的にも悪くありません。一番収穫だと思ったのはVineソナタ。これにはBabayanの名盤があるのですが、それと比べるとより熱い、ロマン的な演奏と言えるでしょうか。Babayanの透徹した、それでいて凄みのある演奏とは違った魅力が感じられます。Bachも最初の序曲などは表現が堂に入っていて惹き込まれるものがあります。ただ終曲(エコー)で、この曲は珍しくBach自身が(チェンバロレジスタの変更による効果を考えて)forteとpianoを細かに指定しているのですが、その変化が徹底していないところがあって(要するにpianoのところをforteのまま弾いてしまったり)、多分意図的だと思うのですがそれがちょっと気になりました。ドン・ジョヴァンニも、3度のパッセージで一部難がありますが、歌心も十分にあってなかなかの佳演と言えるでしょう。(ただ「お手をどうぞ」の終盤でドキっとするミスがあります。)ハンガリー狂詩曲も、オクターヴ連打の安定性はライヴであることを考えるとなかなかのものです。

というわけで、思い切りの良さの反作用として(?)ミスは結構あるのですが、全体的には好印象な演奏です。この後どこかのレーベルからスタジオ録音のCDが出たら(曲によっては)買って見たいと思わせる出来でした。