横山幸雄のBeethovenピアノソナタ全集(その3〜完結編)

Yokoyama Yukio

横山幸雄のBeethovenピアノソナタ全集、やっと聴き終えました。残っていたのは
 1, 12, 19, 20, 22, 23, 25, 29, 31, 32番。
印象は前回とあまり変わりませんが、やはり前〜中期のソナタが良いですねという感じです。持ち前の指回りの俊敏さを生かしてシャープに仕上げています。後期はやはりもうひとつ。31, 32番など、過剰にロマンティシズムに浸ったり深刻になり過ぎるような演奏は彼らしくないのでこちらも望んでいないのですが、1つ1つの音の意味がより重いだけに細部はもう少し入念に仕上げて欲しい気がしました。やや表面的というか、ちょっと彫りが浅い感じです。29番の終楽章なども速めのテンポで健闘しているのですが、頻出するトリルが完璧に決まっているかというと(ライヴだけに)そうとも言えず、スタジオ録音だったらどうだったのかな、と思ってしまいます。

前〜中期のソナタ以上に高く評価したいのが、種々の変奏曲やバガテル、ロンドなどで、ソナタは数多の競合盤の中で存在感を主張するのは(誰の盤であっても)なかなか難しいのですが、これらはいわばニッチ的な存在なので(ディアベリやエロイカ変奏曲はそうでもないですが)彼のように細部までピシっと弾いた盤は個人的にはなかなか得がたいものがあったと思います。

というわけで、繰り返しになりますが、買って損はない全集だったと思います。