Oliver KernのBeethovenピアノソナタ集

Oliver Kern

Web上でネットCDショップのカタログを眺めていたら、Oliver Kern(オリヴァー・カーン)のCDがいくつか出ていることがわかったので、その中で一番興味深そうな1枚を買ってみました(新譜ではありません)。収録曲はBeethovenのピアノソナタ第4, 24, 25番と幻想Op.77。例によって第4番が入っていることが大きなポイントです。

Oliver Kernと言えば第3回浜コンでBaxに次いで2位となり、私も本選でのBeethovenの協奏曲第1番の端正な演奏は強く印象に残っています。(この演奏の素晴らしさによって、猛者揃いのファイナリストの中でも2位に食い込めたのないかと個人的には思っています。もっとも1位のBaxを私はそれほど買っていませんでしたが。)1次のときも、その前に弾いたF.Kempfがイスラメイで会場の喝采を浴びて、この後に弾く人はやりずらいだろうな、なんて思っていたのですが、全く動じるとことなく堂々たるBrahmsを弾きましたし、2次ではGavrilovばりの超高速の10-4を完璧に弾いて驚かせるなど、実力的には確かなものがあります。(思えばこの年の出場者には他にもTarasov, Urasin, Matsuev, Laneriなどがおり、3次の出場者に関して言えばこれまでで一番レベルが高かったと思っています。)

さてCDの方なんですが、まず最初に感じたのは録音が非常に良いということ。響きが豊潤というか、要するに残響が多めなのですが、風呂場サウンドという感じではなく、まるで響きの豊かなホールで聴いているような艶のある音です。(確かにこのレーベル、Real SoundのHPを見ると、音質の良さには自信を持っているようです。)演奏の方は全体的にまずまずというところです。問題の4番は、第1楽章で第2主題のような緩徐部分になるとテンポを若干落とすところがちょっと気になりましたし、もう少しキビキビしたところが欲しい気もしましたが、演奏の方向性は私の好みに合っています。(と思ったら浜コンの3次でもやはり4番を弾いており、そこでも同じような指摘をしてました。そのときほどイマイチと思わなかったのは、私のストライクゾーンが広がったのか、あるいはそのときより演奏自体が良くなったのかは浜コン時の録音を持っていないのでわかりませんが。)

ちなみにこのCDで一番の収穫だったのは、幻想曲Op.77だったかもしれません。これまで余り聴いたことがなかったのですが、演奏が良いせいかなかなか気に入りました。