Kissinのロシアン・アルバム

Evgeny Kissin

Evgeny Kissin(エフゲニー・キーシン)の最近のCDはあまり自分の好みに合わないことが多くて店頭での試聴に終わる(買うほどではないことの確認)ケースが多いのですが、今回のロシアンアルバム(Scriabinの前奏曲ソナタ第3番、Medtnerの回想ソナタStravinskyペトルーシュカ)は試聴したらなかなか良さそうだったので思わず買ってしまいました。試聴のときはScriabinのソナタの第1楽章の音の美しさと、ペトルーシュカの終楽章の出だしのテンポの速さに期待させるものがありました。

で、家でじっくり聴いてみたのですが、Scriabinはやはりなかなかいいです。この曲はそれほど聴き込んだ曲ではないのであまり厳しい耳で聴いているわけではありませんが、それでも素直に良い演奏だと思います。特に試聴で印象的だった第1楽章のロマンチックで幻想的な響きは思わず繰り返し聴きたくなるものがあります。

一方のペトルーシュカは店で試聴したときの期待と比べると今一つというところです。一番気になったのはテンポがやや揺れる(揺らす)ところ。走ってしまうようなところも見受けられます。終楽章などはすごく速いテンポで始まるのですが、しばらくするといつの間にか普通のテンポになってます(それでも演奏時間はPollini盤より短いのですが)。また全体的にキレは見せるものの、丁寧に推敲したというよりは、興に乗ったというか、悪く言えば勢いに任せた演奏という感じがします。以前から言うように私はこのようないわゆるtranscription系の編曲は役者が見得を切るようなヴィルトゥオーゾ的演奏よりも、原曲の良さを忠実に再現するような演奏が好きなのでそのあたりも今ひとつと思う原因の一つかもしれません。

それにしても思ったのは、CDショップの試聴機のヘッドフォンはケチらずにいいものを使った方がよいということですね。音が良いだけでずっと魅力的に聞こえ、衝動買いの可能性もぐっと増す気がします(笑)。その点TOWER渋谷店などはもう少し考えた方がよいかも。(そもそもあそこはヘッドフォンの音が小さくて、店内のBGMにかき消されてよく聞こえないことがあります。音楽にのめり込んで占有されるのを防ぐための店側の狙いなのかもしれませんが…。)