Viktoria LakissovaのTchaikovsky/Pletnevくるみ割り人形ほか

Viktoria Lakissova

1/25のエントリで取り上げたViktoria Lakissova(ヴィクトリア・ラキッソヴァ)のScarlattiオマージュ作品集が好印象だったので、他にどんなCDを出しているのか調べてみたら、Tchaikovsky/Pletnev編のくるみ割り人形などを録音していたことがわかり、早速聴いてみました。曲は他にMozartのソナタK576、Ravelの夜のガスパール、Scriabinのソナタ第5番。ちなみにレーベルはSONYで、こんなメジャーレーベルから出ていたのに全く気がつきませんでした。2001年録音。

くるみ割り人形は落ち着いたテンポで非常に丁寧な演奏。特別な才気は感じませんが細部までキッチリ弾いており、その点で好感が持てます。特にScarlattiでも美点であった明確で粒立ちのよいタッチがこの曲でも発揮されており、中国(お茶)の踊りでのトリルなど気持ちよいです。アンダンテ・マエストーソでの歌い方がやや硬い感じがして(これはScarlattiの緩徐曲でも感じたこと)、また指回りの俊敏さの点でも多少物足りない面はありますが、でも悪くないといったところです。

ただそれ以外の曲はそれほど印象に残るものではなく、MozartのK576は、これまた丁寧で体操の模範演技のような演奏なんですが、やや型通りという感じがして、(ルール・フェスティバルでのPeter Joszaの演奏ではありませんが)多少ハメをはずすところがあっても全体にもっとこう生き生きとした表情というか感興のようなものが欲しい気がします。(私は単に優美でロココ的なMozartには魅力を感じないので。)Ravel, Scriabinも同様に丁寧ではあるけどどこか生温いところがあって、さらに繊細さとか、ダイナミックさとか、瞬発力みたいなものがあればな、という感じです。いずれにしてもこのような有名(技巧)曲で真っ向勝負するにはちょっとアピールするのに弱い面があって、その意味ではこの間のScarlattiアルバムのような企画物はなかなかよい趣向のように思いました。