Christoph Delz補筆によるSchubertのレリークソナタ

Christoph Delz

最近聴いたCDから。作曲家のChristoph Delz(クリストフ・デルツ:1950-1993)によるSchubertピアノソナタD840「レリーク」の補筆完成版と、彼自作の2曲(ピアノのための《シルス》Op.1と《イスタンブール》より3つの抜粋)を収録したもの。
実は勘違いしていて、てっきり演奏もDelz自身によるものかと思って買ったのですが、演奏の方はTamriko Kordzaia(タムリコ・コルツァイア)という女流ピアニストです。

でも演奏はかなりいい線いっています。この曲の最上の演奏とは言えないかもしれませんが、音に輝きがあるし、解釈的にも変にナヨナヨしたところがなく、それでいて細やかな表情も不足していません。個人的に少し残念なのは第1楽章でリピートを省略していることで、私はこの楽章がとても好きなので20分でも30分でも続けて聴きたいところです。

レリーク第3,4楽章の補筆版はKnabやKrenekによるものなどいくつかあるそうですが、現在手元にあるCDで3,4楽章を弾いていたのはPludermacher盤(自身による補筆)だけで、CDでは割合少ない気がします(他にBadura-Skoda盤があるそうですが未聴)。
Pludermacherの補筆は至極真っ当なものですが、真っ当すぎて第4楽章などは個人的にはちょっと面白みが少ない気がします。その点Delzの補筆は自身が現代作曲家だけあって、大胆というか、これは絶対Schubertは書かないだろうな、というフレーズが頻出します。それでも第3楽章は元々の欠落部分が少ないのでギクっとするのはほんの一瞬ですが、終楽章となると欠落部分以後は時代を下ったような音型が多くなっていって、最後の方は自由なカデンツァ風になり、そのまま終わってしまいます。素人考えでは最後にロンド主題に戻って終われば統一感があってよかったのではないかと思いましたが、でも結構面白いです。

ちなみにレリーク以外の彼自身の曲は、ビート感のない、私の苦手とするタイプの現代音楽で、1回聴いたらもういいや、という感じでした。(私は無調は苦にしないのですが無拍子は苦手です。)