Jon NakamatsuのLisztアルバム

Jon Nakamatsu

Jon Nakamatsu(ジョン・ナカマツ)のCDは、'97年のクライバーンコンクールライヴがあまり印象に残らなかったのでそれ以来ほとんどスルーしてきた(ただFossのピアノ協奏曲だけは曲に興味があったので買った覚えがある)のですが、今回はLisztアルバムで曲的にも割と好みだったので買ってみました。収録曲はダンテを読んで、ペトラルカのソネット(3曲)、メフィストワルツ第1番、ハンガリー狂詩曲第2番、即興ワルツ、Schuman/Lisztの献呈など。

全体的な印象は、良くも悪くも「堅実」かな、と。特にメフィストワルツやハンガリー狂詩曲のような技巧顕示系の曲で顕著なんですが、確かに確実に弾けてはいるんだけど、凄みとか切れ味の鋭さとか何かウリになるようなものがもう少し欲しいところです。安全運転、微温的と言ったら言い過ぎかもしれませんが、教科書的でやや面白みに欠けます。ちなみに狂詩曲の方はカデンツァなしで、せめてここらあたりで彼の自己主張が入っていたらよいのですが。またペトラルカのソネットでは、歌心や歌い回しの上手さといったものがあまり感じられず、日系という先入観からくるのかもしれませんが、日本人にありがちな「生真面目さ」がなんとなく漂っています。(献呈などは逆に変なタメが入っていてちょっと気持ち悪い感じがしました。)ダンテはそれらに比べると深刻な曲調が彼に合っていて悪くないのですが、ただ中間の急速部分で、冒頭テーマのところだけテンポを落とすのが(彼の解釈だと思うのですが)個人的にはあまりしっくりきません。

というわけで、またしばらくは彼のCDはスルーしていくことになるかな…。