Joyce HattoによるLiszt編曲集

実はJoyce Hatto(ジョイス・ハット)というピアニストは聞いたことがなく、このCDも収録曲に「ノルマ」と「ランメルモールのルチア」の2つの回想が入っていた(残りはヘクサメロンと「清教徒」の回想)ので買ってみたのですが、後でネットでHattoについて少し調べてみたら実は「凄い」人だったんですね。(ちなみにライナーには演奏者については書かれていません。)
まずディスコグラフィーが凄いです。Beethoven, Mozart, Schubertピアノソナタ全集、Brahms, Chopinのピアノ作品全集、Rachmaninovの全協奏曲と主なピアノ曲Tchaikovskyの全協奏曲、Lisztの主要曲(CD10枚分)、その他Bach, Debussy, Mendelssohn, Reger, Scarlattiなどなど。極め付けはChopin/Godwskyの53の練習曲で、これまでこれを全曲録音したことのある4人のうちの1人だとか。
もう一つはそのお歳で、彼女は1928年生まれだそうなので、このLisztを録音したのは70近くということになります。なんともバイタリティー溢れるお方です。

多録音のピアニストというと、PontiやBiret、(ちょっと質が違いますが)Howardなどを思い出し、個人的にはあまり良いイメージを持っていない(粗製濫造とまではいかないまでも、雑になりがち)のですが、聴いてみたら意外といけます。ヘクサメロンと清教徒はそれほど聴き込んだ曲ではないのですが、清教徒などは曲の良さを十分伝えていますし、ルチアの方ははっきりと佳演と言えるでしょう。少なくとも歳を感じさせる演奏ではありません。ただノルマは例の最難部(「戦争だ」の3回目)がさすがに苦しいですかね。
彼女の他の盤も買ってみる気にさせるかはさておき、少なくとも損をしたという気にはならないCDと思います。

[2007.2.21追記]
Wikipediaの記事によると、このCDの演奏はEndre Hegedusによるものだそうです。私はHegedus盤は持っていないので確認できませんが。