Saleem Ashkarのデビュー盤

Saleem Abboud Ashkar

昨日に引き続いて、今日はSaleem Abboud Ashkar(サリーム・アブード・アシュカール)のデビュー盤の感想を。曲目はMozartのソナタK576、SchubertソナタD784、そしてBrahmsHandelの主題による変奏曲とフーガ。全体的な印象をひと言で言うと、ちょっとインパクトに欠けるかな、というところです。

まずMozartですが、非常によくまとまっているし、コンクールならきっと良い点を取れるであろう演奏なんですが、時代楽器隆盛のこの時代にあって敢えてピアノでMozartを弾く(しかもデビュー盤で)のであれば、何かもう少し世に問う姿勢があってもよいのではないかと思います。(Fazil Sayほど過激にとは言いませんが。)どこかサラサラと流れていって、印象があまり後に残らない(ハッとする瞬間がない)感じです。特に第2楽章はもっと歌心とか工夫があってもよいかと。

2曲目のSchubertはMozartに比べると好感が持てました(特に終楽章など)が、個人的にはやはりもう一歩踏み込んだ表現が欲しい感じです。曲のツボを押さえた、模範的(あるいは優等生的)演奏ではあるのですが。

最後のBrahmsも技術的な筋はよいと思うのですが、何かを印象付けるところまではいかない。(私の苦手な曲ということもあるのですが。)

というわけで、Ashkarについてはまだ態度保留というところです。それにしても、デビュー盤と言いつつもうすぐ30歳というのであれば、もう少し自分の個性、カラーを出してもよかったのではないかと思いました。